一級建築士事務所 アーキラボ・ティアンドエム
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本棚と机。そして、猫。
ホームページのWORKSに家具デザインのお仕事、「FYKN」をアップしました。



以前、子供部屋用に机、いす、ベッド、本棚、お道具箱、踏み台をセットにした子供家具をデザインしていましたが、今回は本棚と机。デザインオフィスでご使用いただきます。

空間サイズに合わせてこれを3台納めました。賃貸オフィスなので固定せず、場所が変わっても使い続けられるようにしています。制作費は1台67,000円。学習机としてもいいのではないでしょうか。シンプルなデザインなので小学校入学時から大人になってもずーっと使えます。天板の色などももちろんお好みに合わせて選んでいただけますし。使い勝手いいと思いますよ。

今回は家具と一緒に照明器具工事とカーテンの交換も行って、空間は劇的に変化しました。「リフォーム」ってほどのことはできないけど、ちょっと雰囲気を良くしたい賃貸住宅やマンションにお住まいの方にもおススメです。このようにわたしたちは家具デザインや照明、インテリアなどのご相談も喜んでお引き受けいたします。「どうにかしたいけど、どうすればいいか分からない!」ってときにはぜひご相談ください。


そして、猫。きました。アトリエに。お二方。

アーキラボの片方は大変な猫好きでして。このアトリエも、野良猫や野良犬(最近なかなかいないですけど)が迷い込んできますようにと塀の下のほうに隙間をつくったのですが、彼らは見事に上からいらっしゃいましたね。

木塀の上もスイスイ。お上手です。


警戒心たっぷりね。時間をかけて仲良くなってまいりましょう。次は犬に期待!お待ちしております。


 
竣工から3ヵ月
ATMNが竣工して3ヵ月が経ちました。自分たちが設計した空間を継続的に使用するのは初めての経験なので、いろいろと試してみた言わば実験住宅として日々観察を続け、反省したり手ごたえをつかんだりしています。

そしてわたしたち、一般的にはまだまだ厳寒期といわれる2月中旬から、暖房を少し弱めました・・・。

いや、暖房代の節約とかじゃなく・・・(もちろん節約もしたいけど)。

暑くなって・・・。

ATMNは床下に暖房を置いて、基礎と床のコンクリートに蓄熱して室全体を暖めようという計画です。引き渡しがすっかり寒くなってしまった12月だったため、蓄熱されるまではなかなか室温が上がらず(18〜19度)、3台の暖房機(ドライヤー3台分の熱量)はフル稼働でした。それが1ヵ月経ったころから「あれ!?」と思い始め、1ヵ月半過ぎたころに「あれれ!?」となり、2月中旬、ついに室温が24度まで上がっていることに気づき「あら〜(喜)!」となって、3台稼働していた暖房機の1台を止めました。

その後、室温は21〜22度を維持して現在に至り、春らしいお天気も手伝っていま稼働している暖房機は1台(ドライヤー1台分)のみ、それも日中は常に稼働しているわけでもなく、温度センサーによって勝手にオンオフを繰り返しています。

自動的に暖房費も下がりました。3ヵ月経ったいま、断熱にお金を掛けた分をどのタイミングで回収できるかという想定について思い至ることはなく、日々のランニングコスト負担が軽く済んでいることを単純に喜んでいます。

実際に住むと、そんな感じじゃないでしょうかね。
札幌版次世代住宅基準 のつづき(3)
前回のブログで「投資回収年数」のことを書きました。断熱・気密に掛けたお金は何年で回収できるか。あっという間には回収できないということ。

それじゃあ意味ないから断熱・気密にお金かけなくていいや。

と思ってしまった方もいるでしょうか??

それは大間違いでして。

ヒートショックという言葉を聞いたことはありますか? 急激な温度変化が身体に及ぼす影響のことで、これで亡くなる方が年間に1万人以上、交通事故で亡くなる方の2倍以上いるそうです。冬の入浴後、寒い脱衣室や廊下に出るときなどに起こりやすいと言われています。しっかり断熱された住宅は室内における温度差がありませんから、住宅内でのヒートショックの予防につながります。

寒冷地ならではの風景に見られる「つらら」。太陽の熱が屋根の雪を解かしてできる場合もありますが、室内で暖房された空気が十分に断熱されていない屋根から逃げ、それによって屋根の雪が解けて作られている場合も多いです。室内を暖めるための暖房で雪まで解かす必要もないわけでして、雪を解かしている熱がもったいないわけでして、その熱のために支払う暖房代も安くはないわけでして・・・。

また、オール電化住宅に住んでいながら「寒いから」ということでポータブルの石油ストーブを併用している人や、暖房していても夕方は電気カーペットから離れられないと言う人の声も耳にします。せっかく新しく建てた住まいなのに基本的な快適性が得られないのは残念です。

札幌版次世代住宅基準で示された投資回収年数はあくまで「現状のままの灯油価格だったら・・・」「灯油価格が今の2倍になったら・・・」という「実際はどうなるか分からないけど例えてみると・・・」という数値上の目安でしかなく、「今より心地よく快適に過ごすための支出」という観点は含まれていません。

わたしたちのアトリエATMNが竣工してもう少しで3ヵ月。この3ヵ月で実感できたことを次に書きたいと思います。




札幌版次世代住宅基準 のつづき(2)
昨日のブログでチラッと触れた「投資回収年数」について。

断熱・気密性能を上げると、工事費は増える分、住んでからのランニングコストは抑えられるので、札幌版次世代住宅基準では増えた分の建設費を何年で回収できるかという試算も出されています。

灯油価格に換算しているのでなんとも微妙ですが、例えば1リットル75円で計算すると、昨日書いた通りベーシックレベルで50年、スタンダードレベルで77年。灯油価格が1リットル150円になったと仮定すると回収年数は半減、それぞれ25年、38年で回収するという計算です。電気やガス使用を想定するとまた違った結果になるとは思いますが、いずれにしても建築後、あっという間に回収できるとは言えません。

先日、住宅を建てるために土地を探している友人から「建物は30年経ったら価値がなくなるけど、土地の価値はゼロにはならないから、売ることも考えてとにかく建物より土地を重視したい」的なことを言われ、建物を提案しているわたしたちは軽く打ちのめされました。

言ってることはすごく分かるんだけど、「じゃあ30年後に売るためにそれまでの30年、寒くて暗い家に住んでもいいの!?」と尋ねましたが、現状、築30年の建物は資産価値がゼロ、建物があっても土地の価格(またはそれ以下)で売買されていますから、そう考えられても仕方がないのかもしれません。

長期優良住宅や今回の札幌版次世代住宅基準では、住宅履歴の保存や評価書を交付することで資産価値の向上が図られています。トップランナーレベルになると回収年数は短く想定して46年、灯油価格が現状のままだとしたら92年ですから1代で回収できるわけもなく、2代3代と受け継がれる100年(200年)住宅として資産価値のあるものという考えが根付かないと普及も進まないでしょう。

補助もそうですが表示制度についても周知されて、設備機器のように簡単に取り替えることができない躯体・壁の中身である断熱・気密性能にお金を掛けることの価値を正当に評価してもらえるようになることを、すごくすごく期待しています。